おにぎり握るように愛してくれない?

キラキラした男の子達のこと

銀テープを掴む日まで

去る2月21日、六本木EXシアターにて行われた「ガムシャラ J's Party!! Vol.8」

トリプルアンコのあと、目に見えない銀テープが降ってきました。あの日、あの場所にいた観客全員がいろんな思いを抱きながらあの銀テープを見ていたと思います。Jr.ちゃんたちが、きゃっきゃとはしゃぎながら、自分たちで効果音をつけながら、飛ばした目に見えない銀テープ。手を伸ばしても取れないそれの儚さったらない。しんみりする私をよそに、安井くんは「いつか銀テ降らせるから!」と高らかに、そして極めて明るい声色で宣言して舞台袖に捌けていきました。

「デビューは就職だ」と重岡くんは言いました。Jr.ちゃん達は未来が約束されていない状態で必死に、それこそがむしゃらに自分をアピールします。俺を好きになれ!と言わんばかりにパフォーマンスを見せつけます。その暑苦しい熱量は、ステージ上で昇華され、キラキラまぶしい何かに代わり、オタクの目に、ハートに、ぐさぐさ刺さります。あの日の六本木もまさしくそんな現場だったように思います。

うちわ禁止という前代未聞の措置が取られた最終日の2公演。真相は闇の中ですが「しょげてるかと思った」と話したみゅーとに思わず鼻で笑ってしまうくらいには、オタクたちは元気でした。吹っ切れた、という言葉が合うかもしれません。公演前に影マイクで「うちわを使わないでね」と呼びかけた安井くんが「嫌われちゃうんじゃないかと思った」と心配したのも無意味なくらいに、オタクたちはその状況を受け入れ、楽しみました。うちわというジャニーズ独特のコミュニケーションツールを無くしたおかげで、オタクたちのファンサ欲求が必然的にフラットになり、余計なことを考えずに目の前のアイドルたちを楽しめたこと、そしてJr.ちゃんたちも、普段はうちわに向けて行えばよかったパフォーマンスをここにいる全員に対して届けなければ!と、必死さに拍車がかかり、相乗効果で会場のボルテージがぐんぐん上昇していきました。バンド形態のコンサートであったことも、あそこまで熱狂的な空間を作り出したひとつの要因であると思います。とにかく、あの場にいる全員が「楽しい!なにこれ!?」と感じたのではないでしょうか。「よくわかんないけどちょー楽しい!!」という一種のトランス状態にあの空間全体が陥っていたのだと思います。

 そんな状態の会場が、通常アンコで収まるわけもなく。あれよあれよと再びステージに戻ってきたJr.ちゃんたちは、どこにそんな力が有り余っていたの?というくらいに全力でキラキラと輝きを増したパフォーマンスを繰り広げ、私たちもただただそのキラキラを享受しながら、彼らの熱量に応えるように、うちわではなく、京本くん(またの名をロック先生)が提唱したロックポーズを突き上げました。夜公演でトリプルアンコのBAD BOYSをやりきったあと、ドラムセットから立ち上がって、ふらふらと階段を下りて、がくっと膝から崩れ落ちた萩谷くん。それを支えるように萩谷くんの小脇を抱えた後藤くん。ようやく全員が横一列に並んで、口々に「楽しかった、みんなすごかったよ!ねえ!」と無邪気に今の気持ちを呟いていました。そこで「あれ、やりたくない?」と安井くんが呟きます。アレ、とはコンサートの最後、「俺たちは~?」の掛け声のあとに会場全体でユニット名をつづける、アレ。昼公演では「俺らってなんなの?」と至極当然の疑問があがり、でもすぐさま「ジャニーズJr.だろ!」と答えが返ってきました。彼らにはユニット名なんてありません。このメンツでこの演目を再びやることも、(おそらく)二度とありません。彼らはただ、ジャニーズJr.として確実性のないゴールを目指すという共通項しか持ち合わせていません。それでも、それを超越した達成感や団結感、満足感が彼らのなかに存在していたのだと思います。もちろん会場にいたオタクたちの心にも、存在していたはずです。よし、と手をつないだ彼ら。

「俺たちは~?」\ジャニーズじゅにあ~!!/

この儚さと尊さだけは一生覚えていなければならない!と胸が締め付けられる思いでした。そして、冒頭に戻ります。見えない銀テープを、彼らは飛ばしたのです。今思い出してもぎゅっと胸を締め付けられる光景ですが、記憶のなかの彼らは無邪気でひたすらに楽しそうで、ただただ笑顔でした。夜公演でこのくだりをやったあと「ジャニーズJr.でよかった!」と心からの笑顔で話す彼らに、デビューの約束のない未来への憂いなんて1ミリもありませんでした。感じさせないように明るくふるまったのかもしれませんが、どちらにせよ泣けました。

「銀テープを降らせる」具体的なようで実は曖昧な表現であると冷静になってみて思います。デビューをせずともソロコンを行い、銀テープを降らせたグループはこれまでにもいたからです。でも安井くんが言った銀テープには、デビューという言葉がにじんでいた、と私は信じたいです。23歳、大学進学という選択肢を捨ててジャニーズの道を全うする安井くんが幸せになれない世の中なんて間違ってると割と本気で思う。いつか、安井くんが降らせる銀テープを掴むその日まで、この日のことを忘れないために、記しておきました。安井くんをはじめとする、ジャニーズJr.戦国時代を生き抜く彼らの銀テープを掴む日まで、オタクはやめられません。