おにぎり握るように愛してくれない?

キラキラした男の子達のこと

REAL ME の罪

忘れもしない5月の名古屋キスマイツアー初日。そこで、2018年の藤北曲である「REAL ME」が初披露された。

北山くんは「ここに誓う I Love you」と歌い上げたソロ曲を一番最後に振り向きざまの「嘘だよ」という自分の囁きで打ち消した。そして着ていた青いガウンを脱ぎ捨て、白いシャツ一枚になり、センターステージをはさんだ向こう側に現れた藤ヶ谷くんをぐっと薄い色のサングラスの下からにらみつけた。歌いだしのソロパートのあと「絡ませて 指の先まで」という歌詞の通り自分の両手を絡ませるふたりが、それぞれの肩越しにスクリーンに映し出される。そこからの記憶は、実際あんまりない。じわじわとふたりの距離が近付くたびに息が詰まる感じがした。それから何回も見たけれど、いつもなんというか冷静でいられなくなって記憶が飛んでいる。センターステージで、ふたりの指が絡み合って力強くつながれたことも、そのままぐっと距離が近付いてそれぞれの腰から脚を撫でるように見えたことも、全部夢じゃないかと思っていた。黒と白の塗料を、お互いの腕や胸に塗りあったことも、藤ヶ谷くんの汚れた腕に後ろから抱かれて、その腕にねっとりを触れる北山くんがいたことも。ぜんぶぜんぶ夢だと思っていた。幻覚だと思っていた。というか、夢だと思いたかった。それがぜんぶ私が見た夢の話なら、私はこんなに藤北のことで爆発しそうな感情を抱えて過ごすこともなかったと思う。夏のコンサートは円盤化された。REAL MEが夢ではなかったことが証明されてしまった。そして追加された冬コンのセットリストにも、REAL MEは残されていた。今年、ふたりは計17回もREAL MEをやった。汗でベトベトになる熱すぎる夏に、寒風吹き荒む真冬に、塗料をベタベタに塗りあいっこしていた。

私はREAL MEを見て「藤北」というシンメのことがわからなくなった。藤北のことが好きだから、藤北のことをたくさん考えて、自分なりに噛み砕いて理解したつもりでいたけど、いよいよ迷子になってしまった。

なぜ藤北のことがわからなくなってしまったのか。

私は藤北というシンメは一生背中合わせで生きていくのだと思っていたからだ。

FIRE!!!は、バチバチとダンスバトルのようにお互いを煽りあって、最終的には目が一度も合わないまま背中合わせで終わる。向き合うタイミングはあるし、腕と腕が絡み合ってめちゃくちゃ距離は詰まるけれど結局のところ触れ合わないで終わる。FIRE!!!は男と男のバトルなのだ。私の藤北の解釈はFIRE!!!そのものであるといっても過言ではない。ていうか藤北をあらわすものがFIRE!!!だと思っていた。FIRE!!!こそ藤北であると信じていた。

でも、今年の藤北は向かい合って終わった。曲終わり、ぎゅっと手をつないで、その手を掲げて、こちらに見せ付けてきた。男同士のバトルのFIRE!!!から4年。ふたりは「あなたを愛すること=僕の摂理」と歌って「You are my darling」と指を差しあった。たしかにこの4年、いろんなことがあった。藤ヶ谷くんも北山くんもお互いに30代に突入した。藤ヶ谷くんがまとう雰囲気が明らかに柔和になり、自然とキスマイ全員の雰囲気も良くなっていった気がする。生身の人間を見ているから、そりゃ変化していく。ふたりの関係性だって変わっていくだろう。でもなんていうか、こういう方向に行くなんてまさか思っていなかった、というのが本音だ。だってあまりにも極端すぎる。藤北は背中合わせでしか隣にいられないと思っていたのに。指と指が絡まるなんて、そんな。

結局私は、2018年も終わろうとしているのに2018年の藤北について噛み砕けないままでいる。これから先藤北の歴史はREAL ME以前、REAL ME以降で分けられることになるのだろう。REAL ME以降の藤北は明らかに距離感がぶっ壊れている。雑誌のツーショット企画からは、以前のようなぎこちなさは消え去り、ふたりラジオでも前とは違ってお互いがいつも通り(他のメンバーと話しているような)の雰囲気のまま話をしている。私はまだREAL ME以降の藤北のやわらかい雰囲気を受け入れられていない。興奮するけどめっちゃぞわぞわする。じゃあ氷河期のころのほうがよかったの!?って言われるかもしれないけど、そうじゃない。だって氷河期のころの北山くんの寂しそうな顔はつらいし、そのころの藤ヶ谷くんのことは今でもあんまり好きじゃない。それなら仲直りしてよかったじゃん!!!!っていう流れになるのがふつうだけど、そこに乗れないのが藤北をこじらせたオタクの末路だ。どうやったって心が理解してくれない。このままだと時代の流れに追いつけないまま平成が終わってしまう。

あとひとつ、決定的にこれからの藤北の道をはっきりさせるなにかがほしい。なんの弁明もないまま「You are my darling」ってお互い指差して宣言されても困る。お願いだからなにかするか、なにか言って…ふたりでご飯いったとか、そういう、なんていうか俺ら歩み寄りましたよエピソードくれたら、納得できなくもないから……あんなパフォーマンスで見せつけるだけで終わりにしないで……お願い……。私はREAL MEのせいで、これから先藤北にどうあってほしいかもわからなくなった。自分を見失ったのだ。これから先ふたりがどんなシンメとして生きていくつもりなのか、想像もつかなくなった。どこを目指す?なにになる?私はどんなふたりを見たい?もう本当にぜんぜんよくわからなくなった。REAL MEのせいだ。今年の藤北を噛み砕けた藤北厨に教えを乞いたい。REAL MEってなんだったんですか?せめて元号が変わる前には、私は今の藤北を受け入れて素直に興奮したいです!